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森 好治郎

アナリスト森 好治郎 氏のマーケットウォッチをアーカイブしています。

08月22日 12:18 “It never rains but it pours”(降れば土砂降り)

米ドルの対主要通貨相場は、これまで無視し続けてきたドル安材料がぶり返される形で全面安の展開となった。 ほぼ一本調子のドル高が進展してきただけに“調整”が警戒される局面ではあったが、この日の下落は「降れば土砂降り」の如くとなり、筆者の強気スタンスに冷や水を浴びせられた。

この日のドル安要因として報じられているのは、@GSE(米政府系住宅金融機関)への公的資金注入観測、A米証券大手リーマンの増資破談報道、B米金融機関の評価損拡大と7−9月期の業績悪化見通し、Cグルジア紛争を巡る米ロ緊張を起因とする原油先物の急騰―――などであった。

いずれもドルのセンチメントを悪化させるには十分な要因であるが、市場に伝わった時点からタイムラグが生じていることには留意が必要であろう。

例えば、Aの「リーマン増資破談」については、ロイターが8月20日の19時35分に米ニューヨーク・ポスト紙の記事として「韓国のファンドや機関投資家から約50億jを調達することで合意寸前までいったが、正式合意はできなかった」と報じていたものである。

また、Bの「米金融機関の業績悪化見通し」についても、シティグループのアナリストが8月20日付のリポートで、「リーマン・ブラザーズ・ホールディングスとゴールドマン・サックス、モルガン・スタンレーの3社は合計で64億jの評価損を計上する」との予想を示していたものであり、金融株は20日こそ大きく売られたが、その後は下げ渋っている。

そして、Cの「グルジア紛争を巡る米ロ緊張を起因とする原油先物の急騰」についても、8月20日の19時過ぎには「米国とポーランドは20日、米ミサイル防衛(MD)計画の迎撃ミサイル施設をポーランドに配備する文書に正式調印した」と報じられていたものである。 筆者の手元には、ロイターが報じたワルシャワ発の記事が残してあるが、それはロシアと米国間の緊張が高まるのではないかとの直感からであったが、同日のマーケットでは材料視されなかったというのが実情である。

もっとも、材料が消化しきれていなかったという解釈もできるが、それならば投資家心理が大きく悪化しているはずであるが、米国株の代表的な投資家センチメント・インディケーターであるVIX指数は19.82と20日の20.42から意外にも改善し、“安定”を示唆する20以下に落ち着いているのである。

一部のアナリストからは、「これまでの米ドルの自律反発局面は終了し、新たな下げ局面の瀬戸際にある」との見方がなされているが、現段階では調整パターンの見極めを優先すべきであると考えたい。

当面の注目点としては、@の「GSE(米政府系住宅金融機関)への公的資金注入観測」の行方が挙げられ、市場は既存普通株の無価値化を織り込んで暴落しており、米政府・議会に投げられたボールをどう打ち返すのかが焦点となってこよう。

深刻な低迷を続ける米住宅市場の救世主であったはずの住宅金融大手2社の経営体力低下が顕著となるなか、住宅ローン担保証券の買い取りや保証業務に支障を来たすことになり、米政府・議会は動かざるを得ない事態に直面しているといえよう。

また、フレディマックが8月19日に実施した30億j(5年債)の資金調達コストは年4.172%と、5年物米国債に対する上乗せ金利は年初から倍増し、過去最高の1.13%に達している。 資金調達コストの上昇は、フレディマックが提供する住宅ローン金利にも波及することになり、住宅市場低迷の悪循環となりかねない。

毎週木曜日にNY連銀が公表する「カストディ・アカウント」(海外中央銀行から預かる米債・政府機関債の残高)によれば、政府機関債の残高は7月16日がピークとなり、8月20日まで5週連続で減少していることが明らかになっている。

政府機関債は、過去5週間で合計136.54億jの残高が減少しているが、米国債は同期間に597.94億jの入超となっており、ドル不安を連想させるには至っていないが、最早、ファニーメイやフレディマックが発行する債券は「暗黙の政府保証」の効力は失しており、政府支援は不可避な情勢にあるといえよう。
(⇒ファニーメイとフレディマックの2社は、9月末に合わせて2,230億j相当の債券が償還期限を迎えると報じられており、政府支援なしで返済できるか否かが懸念されている)

さて、昨日のドル/円は、主要チャートポイントが次々に破られ、108.13円まで急落している。

この日の安値108.13円は、重要な押し目となった7月16日の103.77円から110.67円(08/15)までの上昇幅に対する38.2% retraceの108.03円処の手前で下げ止まっているが、21日平均線(=108.94円処)がNYクローズで破られており、同線が下向きに転じる前に上抜かないと調整が長引くことになる。 (⇒本日のNYクローズで21日平均線を上抜く場合は昨日の下落が一時的な調整と解釈することができる)

NYクローズが21日平均線を上回ったのは7月18日であり、上回った期間は24営業日で、前回の期間(5月27日〜6月27日)を1日上回ったことになる。 一方、NYクローズが21日平均線を下回る期間は、前回が15営業日(6月27日〜7月17日)であり、これを今回に当てはめると9月10日となってくる。

足元では、13日RSI(相対力指数)が51%へ低下して“Failure swing”(中期的な天井を示唆)を完成しており、一段安のリスクには注意したい。

当面の下値攻防の焦点は、95.77円(03/17)を起点とするメジャーの上昇トレンドライン【A】であり、同線は1日当たり約0.091円切り上がるため、本日時点では106.22円処に位置する計算となる。

尚、『200日平均線』は再び下向きに転じており、この状態で『89日平均線』とクロスする場合は、ゴールデンクロスとは解釈されないため、200日平均線の向きに注目しておきたい。

一方、ユーロ/ドルは一時1.4904jまで急伸し、13日RSI(相対力指数)も22%への上昇により売り継続のシグナルは消滅している。

もっとも、この日の高値1.4904jは1.6040jから1.4630jまでの下落幅に対する23.6%(マイナー・リトレース)の1.4963j処には及ばず、日足チャート上に記したメジャー・チャート・ギャップ(強力なレジスタンスエリア)の手前で上げ渋っている。

こうした観点からは、チャート・ギャップをレンジ上限とする中段揉み合い(日柄調整)となる可能性が高いとみておきたい。

(8月22日 11:45記)

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